路上でLet It Beを演奏している二人組がいた。キーボード+歌という編成だった。マイクを通してはいるものの、ボーカルの音量が絶妙に小さく、ピアノの奥に、かすかに歌が聞こえる。身振り手振りがその音量に見合わないほど集中の饒舌さである。いや幻聴かもしれんと逡巡しながら歩いた。道ゆく人も、え、歌ってる?と話していて、そちらの声の方が明瞭に耳に入る。新宿に末廣亭という寄席があって、あそこも聞くのに集中を要する音量で、デジャヴっぽい気分になった。末廣亭の場合はむしろそれが目的なのかもしれないが、この二人組はそういうわけではないだろう。自分を客観視するというのはかくも難しい。