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2025年2月3日
2週間ぶりのゼミ。今回の調査を経て、人の発表を聞くときの細かいデータを見る解像度が上がった気がする。帰国お疲れ様&後期お疲れ様ということで後輩がご飯会を企画してくれた。ありがたいことに色んな研究室のひとが集まってくれたのもあってよかったし楽しかった。こういう場で自分の研究室のことを相対化できる、みたいな経験があるのはよいことだと思う。それが今回は自然に起こったが、これを意図してというのはやはり難しいかと思うなど。陸の孤島みたいな場所に大学があって、ゼミ終わりに飲みにいくなんてことがやりにくく、そういった環境のデザインをなんでうちの大学はしなかったのかとよく腹を立てている。
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2025年2月2日
飛行機に乗る時、お腹が弱いので、指定できる時はだいたい通路側の席を取る。バンコクから福岡行きの飛行機に乗り込むと、私の隣、窓側に本来は別の席に座るはずのおそらく東南アジアのどこかの国からの客が座っていて、本来その席に座るはずのお爺さんと揉めている。2人に言葉の壁があったので通訳してあげると、窓際の彼女は本来の座席に移動した。AとCを間違っていたみたいだ。おじいさんに窓際へどうぞと誘導するもトイレに行きたいから通路側(B)を譲ってくれと言われる。なんかもう面倒くさくなってどうぞと窓際に座る。通路挟んで隣がCなんだから、彼女と席を交換すればよかったのでは、と足をとても広げる彼を見ながら思うなど。あまり眠れなかったものの無事帰国。
ずっとぬるいシャワーを浴びていたので、お湯に浸かりたいと思い近所のカプセルホテルへ大浴場だけ借りに行った。浴槽の床にずっと片手をついてバランスを取っているようにみえる様子のおかしいお爺さんがいて、大丈夫かなと様子を伺っていると、案の定、お湯から出る時に私の目の前で浴槽の縁に倒れ込んだ。肩をゆすって「大丈夫ですか?」と確認しつつ、その場にいた人にスタッフを呼んでもらった。遠くの方から「息はあるか?」と別の人から問われ「あります」と答えると「じゃあ大丈夫だよ」とのこと。スタッフもきてなんとかお爺さんを座らせる。私だけ動揺していてみんな落ち着いていた。よくあることらしい。さっき遠くから息はあるかと確認してくれた男性は2回ほど最悪のケースに遭遇したらしい。お爺さんが大丈夫そうになったのを見て大浴場の外へ出た。
席を譲ったり肩をゆすったり。
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2025年2月1日
移動日。乗り継ぎが二回、一日で三回飛行機に乗ることになる。荷造りして荷ほどきして荷造りしてがとにかく嫌いでこういうきついスケジュールにしてみたけれどどっちもどっちだった気がする。保安検査場を過ぎたあたりからひどい咳が出るなどぐっと具合が悪くなってきて、なんとか二週間はアドレナリンなりなんなりで頑張っててくれたんだ、身体ってすごいと思った。M150というタイの栄養ドリンクを空港価格で高かったが買って飲んだ。ビエンチャンからバンコクへの移動の際、後ろの方の席だったのでけっこう早めに搭乗することができた。とはいえ、すでに座席の上には荷物が置けませんとのことで、リュックとショルダーバッグの両方とも座席の下に置いた。
それから何気なく搭乗する客の様子を見ていたのだけれど、あまりに多くの客が荷物を座席の上の荷物入れに詰め込もうとしていてアホかと思った。すでにいっぱいで閉じられている荷物入れの扉を開けてまで詰め込もうとする。そんなに床の上に置くのって嫌かね。俺は二個も座席の下に入れているのにずるい、という気持ちがないといったら嘘になるが、それよりもそのせいで出発が押してそうなのが嫌だ。挙げ句の果てに最終盤に搭乗してきたスーツケースを持ってきた客のそれが入る隙間がない。添乗員が柔らかい鞄を荷物入れに置いた他の客に謝って移動させている。スーツケースなんだから早く乗ればいいのに、とも思ったが、人それぞれに事情があるのでしょう、、もともと狭量だが、さらに疲れで心が狭くなっている。











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2025年1月31日
調査としては全日程が無事終わった。あとは移動のみ。朝晩はこちらも冷え込むとはいえ、10℃以上ではあり、これから冬の日本に帰ると思うと気が滅入ってくる。いやはや。ゲストハウスの近所で昼からずっとパーティが行われていて、ずっと爆音でカラオケ大会が行われていた。Sazamしてもどの曲も出てこなかった。今日も急遽ひとつインタビューができたので、そのデータを整理をしようと思うも集中できず、ノイズキャンセリングイヤホンをつけた。来たばかりの頃だったら、駐車場に置かれたテーブルに場所を変えて、その音楽を聴きながらやっていたと思う。だいぶ神経をすり減らしている自覚がある。余裕がない。帰国後の反動をどう予防したものかと懸念している。とはいえ、帰国後はいまほっぽっている同時進行のものが四つほどあって休む暇はない。いやはや。
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2025年1月30日
昼ご飯にダック(アヒルと鴨どっちだ)の血にその肉を漬けた料理をトムが注文した。自国の料理を、ということでその店に珍しい料理があると注文してくれる。香辛料のせいか、たっぷりと絞ったライムのせいか思っていたよりも臭みはなかった。とはいえ、イメージが先行してしまって少しだけしか食べられなかった。さっぱりとしたものがほしくなってペプシコーラを注文した。いつか慣れたりするんだろうか。
昼は米だったので夜は麺でいいか?とトムに聞かれたので、いいよ、と答えると、じゃあスペシャルな麺を食べに行こう、と言われた。ここ二週間で初めて入る食堂で、壁と天井が水色に塗られた店内に入るとき、店主がにこやかに笑いかけてくれた。壁にはチェゲバラの絵とフェラーリの絵が並んで掛けられている。隣のテーブルには若者が三人座っていて、そのうち一人のジーパンに下着が見えるぐらいのダメージが入っていた。Pork Waterfallという豚の血からできたスープを頼んだよとトムが言う。昼は鶏で夜は豚かと戸惑っているとJust Kiddingとトムが笑う。いま私の不安そうな顔を見て、気休めにやさしい嘘をつかなかったか?と思ったが信じることにした。そう思わないと食べられそうになかったから。
しばらく待っていると、三人分ぐらいはあるんじゃないかという太めの米の麺、豚肉と牛肉、肉団子が真っ赤なスープに入っていた。やっぱ嘘じゃんかよ、いやどっちなんだと思いながら、とはいえこれしかないので麺をすする。意外とスープは食べられそうだ。次は、と豚肉を食べるとコンビニの豚しゃぶサラダのような食感で、なんでかわからないけれど無理だ、、という気持ちになった。それでも一口ぐらいはと思い次は牛肉を食べる。シンダートというジンギスカンのような焼き肉を食べたときも思ったのだけれど、牛肉に独特のざらつきがある。豚肉よりもこちらのほうが厳しかったがなんとか飲み込む。やはりイメージの問題なのだと思う。豚の血という話を聞いていなかったら食べられたような気がする。店主に申し訳ないと思いつつ、麺(一人分弱ぐらい)ともやしと何かの野菜の茎だけを食べてあとは残した。
ゲストハウスに戻りPork Waterfallで調べるといろんな情報が見つかった。どれが本当なのかわからない。ある解説によると、タイのイサーン地方の伝統料理らしい。調理中に滴る豚の血(Chat GPTは肉汁と答えた)が滝のように見えるというのが由来とのこと。ほらやっぱり、、ミントの葉の上にグリルした豚肉とパクチーなど様々な調味料をかけて食べるもので、葉をトルティーヤに変えればタコスみたいだ。それのスープ版を今日食べたのだろうか、全然グリルした豚肉、という感じではなかったけれど。お腹がぐるぐるしていたのでベッドで横になり、とはいえあまり食べていなかったせいでお腹は空いており、お土産用に持ってきていた抹茶味のポッキーを一箱一気に食べた。
幼い頃からかなりの偏食で親を困らせてきた。意識の高い幼稚園に通っていて、ご飯とパンの日が交互だった。ご飯の日は、タレのかかっていない、例えばひじきなんかと和えられた納豆が頻繁に出ていて、食べられなかった。みんなが昼休み運動場で遊ぶ中、残してもいいよと言われるまで納豆と向き合っていた。パンの日は比較的マシでたまにはみんなと鬼ごっこをすることができた。そんな昔のことをスープと向き合いながら久しぶりに思い出した。私の偏食は、生得的なものと社会的な環境のどちらのせいだったのだろう。食の欧米化だね、などと言われてしまうのだろうか。
私の研究は、食において、伝統的な領域に、資本主義的なものがどのように入り込んで来ているのか、に関することと大雑把に言うこと出来る。そんな雑な、わかりやすい昔からの二項対立でいいのかよ、とはずっと思っている。じゃあどうすればいいんだ、あーでもないこーでもないと試行錯誤しているここ数年だ。ただ、20数年前に納豆と向き合っていた時間、今日の昼ご飯にペプシコーラを頼んだこと、晩ご飯のスープを食べられなかったこと、ゲストハウスに戻って抹茶味のポッキーを食べたこと、そこから目を反らしたら嘘になってしまうということはわかる。
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2025年1月29日
さすがに疲れてきてあくびが増えている。もう10日ぐらいかなりの集中力を要するインタビューを毎日、異なる言語で行っているのだから仕方がない。先日のダートな道の長距離移動の疲弊も尾を引いている。ちょっとでも揺れると頭痛がして、脳みそがこれ以上は揺れてくれるな、と叫んでいるような気がする。旧正月でベトナムルーツと思われる家族の商店や家の軒先ではパーティが行われていた。スマホとマイクをスピーカーにつないで、おそらくYouTubeでカラオケの動画を見ながら、肩を組んで歌っていた。今日に限らず、夜になると、ドンキホーテで見かけるようなどでかいスピーカーを使い、軒先に椅子を出して腰掛け、音楽を聴いている姿をよく見かける。23時には静かにしないといけないらしい。
