2025年10月29日
書類にサインするために大学へ。遠方で暮らしている身からするとオンラインで対応できるようにして欲しいものである。
正午過ぎのバスに乗ると、今日は席に少しだけ余裕があり、後方の席に座ることができた。この時間帯の便だとよく一緒になるお婆さんが私の一つ前の列に座っている。彼女はいつもその辺りに座っていて、それはおそらくトートバッグを脇に置いて二人分の席を占有しなければならないからだ。前方の優先席は椅子が一つだけなので荷物を床か膝の上に置く必要があるが、それは嫌なようである。特に混んでいるときに見かけると、膝の上に置いてくれれば一人座れるのにと私は腹を立てていた。他に席が空いていたりすぐ降りるならまだ理解はできる。しかし、彼女も大学で降りるため一時間ぐらいは乗っているのだ。常々どういう了見なんだろうと思っていた。
彼女のことを覚えているのは二人分の席を占有するからだけではない。バスを降りるときにビニール手袋を片手につけるので、どうして?と気になっていたからである。コロナもあって衛生的なことが気になったり、そういったことに敏感にならざるを得ない持病を抱えていたりするのかもなのしれない。それ自体はまったく問題ではないのだけれど、印象には残っていた。
ビニール袋がトートバッグから見えて、今日もだ、と思っていると、彼女が急に身体を屈めた。飛行機の緊急着陸のときの姿勢の一歩手前ぐらいである。体調不良だろうかと心配していると、単に半分脱いでいた靴をちゃんと履こうとしているだけだった。杞憂でよかったと思うも束の間、彼女が片脚をあげ、靴を座席に乗せた。上手く履けないようで、何度か靴を座席から降ろしたり乗せたりを繰り返しながら、なんとか到着前には履けたようである。いつものようにビニール手袋を片手にはめて、手すりを掴み、私の降りるバス停の三停前で降りていった。
自分のことを綺麗なものとして考えているなら他は汚れてもよかろうということだとすると、ビニール手袋を嵌めることも、靴を座席に乗せることも一応は筋が通っている…のか? と一瞬よぎったが、人にされて嫌なことは人にすべきではないな、と思い直す。