ちょっと遠目の神社で開催されたアートブックフェアへ。近所の商業施設に関連のポップアップショップが出来ていて昨日見に行ったのだった。一部の本は試し読みしたり買ったりすることはでき、暑いしまあこれで見たことにするかと迷っていたが、やはり後学のために現地で見て、雰囲気も味わわなければと早起きした次第である。同人誌のデザインに携わることがなければきっと行こうとすら思っていなかったと思う。不思議なものである。
ZINEをはじめ一般流通するアート系の書籍や美術展の図録など幅広く販売されていて、個人書店や出版社の出展が多いのは、文フリとちょっと違うのかもしれない、と思った。福岡のものしか経験がないが、文フリの場合個人やグループでの出展という印象が強い。同人誌みたいにけっこうな数の書き手が集まって一冊の本を、みたいなものがこのフェアではほぼ見当たらず、これも不思議だった。会場が二つあって一つは畳の空間で、庭が見えたり趣があった。ただ、そもそもエレベーターなどがなく車椅子であがれないところを会場に選ぶのは(ウェブサイトに断りはあったが)やはりどうなんだろうかとは思った。もう一つの会場は、ブーストブースの間の通路が狭くてなかなか前に進めず、熱気は伝わるがこの塩梅は難しいものだなと思うなど。
この日記のタイトルの通り、備忘録的にいくつか参考になったことを書いておく。
- それぞれの本への簡単な説明(1ツイートぐらい)の紙が見本誌にくっついていた。表紙からは中身が想像できない本が多く、かといってひとつひとつ開くのも手間であり、有り難かった(なければないで、会話のきっかけになることもあるのだろうけれど)。
- かなり大きめなかなり目立つパステルカラーの紙袋を500円ぐらいで売っているブースがあり、それを本を入れるバッグとして持っている人が多く、宣伝になっていた。
- フリーペーパーやステッカー、名刺を無料で配布しているブースがあったけれど、話を聞くまでそれが無料だと気づけなかった。こういったのはでかでかと示したほうがいい。ブース自体のデザインが大事だ。そういった同人誌・ZINEがあったらけっこう売れそうな気がする。
さて、いくつか海外からの出展があって、それらを中心に見て回った。というのも、横書きの日本語をどうデザインするのかというのが、目下の私の課題で、英語の本もいいが、アジア圏のものであればなにかより吸収できるものがあるのでは、という目論見があったからである。やはりアートブックフェアなので文章が中心となったものが少なかったが、少ないなりに色々と見て、私はもう少し自由に文字を組んで、配置してみてもいいのかもしれないと思った。
が、それをやるとシュッとした感じにはなって、そういったものに対しては、距離を取りたいという意識があり悩ましい。少し話は逸れるが、行政や大学、NPOなどが無料で配っている冊子を見て、似たような違和感を抱くことがある。この内容で全部カラーにしないといけないのだろうか、お金があっていいですねえ、などと思うことが少なくない。そんなものより、あなた方職員の持っている、例えば、仕事や社会、地域への問題意識を、コピー本にして配ってくれたもののほうが読みたい(私だけかもしれない)。一方で、文フリなんかでたまに見かけるとりあえず文章を載せとけばいいだろう、みたいなものに対してはなんでこうなるんだろう、と思う。基本的な技術がないのか、それともそもそも読みにくいと思っていないのか、と。
HIPHOPの楽曲について言及するときによく使われる「いなたい」というワードがある。辞書的には、田舎くさい、と紹介されることが多いが、もうちょっと違うニュアンスがある。シュッとはしていないけれど、気骨がある、とでも言うべきか。私が作りたいのはいなたさとポップさを併せ持つものだ。両立しない概念なのかもしれないけれど。ああ、これがオーセンティシティの問題か、となかなか出発しない帰りの電車のなかで考えていた。